ねずみちゃんの命

先日、夕暮れ時のオフィス街を歩いていた時のことです。

 

大きなビルの入口で、

OLさんらしき若い女性が、かばんを振っていました。

 

どうしたのだろう・・・

 

近くを通り過ぎる時、見えたのは

地面に横たわる、茶色の小さなかたまり。

そしてカラスも。

 

「どうしました?」

とっさに声をかけてしまいました。

 

「まだ生きてる」

彼女が言いました。

 

足元の茶色いかたまりは、ねずみでした。

おそらく、弱っているところを

カラスに襲われていたのでしょう。

 

「まだ生きてるのに」

また彼女が呟きました。

 

「病院、連れていってみましょうか?」

「近くに病院ありましたよね?」

私と彼女は、こころが通じ合ったようです。

 

 

彼女の名前は、Yさん。

お互いが持っていた

衣類や、コンビニの袋でねずみをくるみ

病院へ急ぎました。

ねずみは温かく

弱々しいけれども、しっかり動いています。

  

動物病院では、

快く治療を受け入れてくださいました。

残念ながら私は次の仕事があり

Yさんが、後のことを引き受けてくれたのです。

  

しかし、そのあとすぐに

Yさんから電話。

「病院で手を尽くしてくれたけれど、亡くなりました」と。

カラスに襲われ、とても弱ってしまったようです。

  

後のことは、私がお引き受けしました。

翌日、病院へ迎えに行くと

遺体は丁寧にくるまれ、小さな箱の中で眠っていました。 

 

あたたかくて優しい春のひだまりの中

ねずみのお見送りをしました。

 

Yさんにも、お見送りの件をご報告し

「自分ひとりだったら、ここまで出来なかった」

お互い、同じ思いを伝えあいました。

 

そして、私がYさんだったら…

道端で、苦しんでいる小さないのちに心を留め

人が行き交う中、カラスを追い払っていただろうか?

 

たぶん、できません。

 

忙しさを言い訳に、

心を痛めながら通り過ぎてしまったと思います。

 

ねずみちゃんは、とても怖くて痛い思いをしたけれど

今頃は天国で癒されていることでしょう。

 

ねずみちゃん、よかったね。

Yさんが、人目も気にせず全力で守ってくれたね。

  

最後に、ねずみちゃんの優しい姿を下の方へのせておきます。

悲しいと思われる方は、ここで終わりになさってください・・・